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 前の記事で予告したとおり、国連総会は18日、死刑執行の一時停止(モラトリアム)を求める決議案を採択した。(賛成104、反対54、棄権29)

死刑執行の一時停止を求める決議、国連総会で初めて採択(読売新聞、12月19日)

UN calls for halt to executions(Amnesty International(英語), 12月19日)

 さて、日本は死刑存置では米国と「同盟関係」にあると思われがちだが、このたび、ニュージャージー州が死刑を廃止した。

<死刑>米ニュージャージー州が廃止に 議会下院で法案可決(毎日新聞、12月14日)

 「1976年に連邦最高裁が死刑を合憲として以来初」と説明しているマスコミもあるが、毎日新聞などによれば、現在米国では、連邦最高裁が毒物注射による処刑が「むごい罰」を禁じた憲法に違反していないか審理中で、執行が困難な状態にある。また、州法で死刑を規定しているのは全米50州のうち37州だが、うち21州では行政が死刑を凍結している。

 要するに、米国はテキサスなど一部の州を除き事実上「ほとんど死刑停止国」なのであって、いわゆる「先進国」のなかで、死刑を積極的に推進しているのは、日本だけということになる。

 12月に入り、日本の死刑をめぐる動きが緊迫化してきた。

 先月(11月15日)には、国連総会第3委員会が、全世界的な死刑の執行停止を求める決議を採択した。
国連総会委、死刑執行停止を決議 日米中などは反対(中日新聞、11月16日)
国連総会の委員会、死刑執行停止決議を採択(AFP、11月16日)
国連 : 死刑の執行停止に関する画期的な決議を採択(アムネスティ、11月19日)

 決議案は、賛成99か国、反対52か国、棄権33か国で採択された。日本は米国、中国などとともに反対したが、いまや法律上あるいは事実上死刑を廃止しているのは133か国にのぼり、06年に死刑を執行した国は25か国しかない。AFP報道などによれば、早ければ12月にも加盟全192国が出席する国連総会本会議に採択にかけられるとみられ、採択されれば国連決議となる。今回の委員会決議の採択は法的拘束力はないものの、「死刑制度廃止の必要性を世界各国が認識する転換点となる」(リペール・仏国連大使)、「倫理的・政治的に大きな重要性がある」(アムネスティ)という見方を否定できない。

 ところがこの国連の動きに水を差すかのように、日本では12月7日、3人の死刑囚の死刑が執行された。

 今回の執行について、マスコミは執行された死刑囚の氏名などが公表されたことをことさらに取り上げ、拍手を送っている。たしかにこれまで公表されなかったことは、死刑の賛否を問わず「秘密主義」と批判されてきた。しかし、今回の執行に関する法務省や鳩山邦夫法相の見解を読むと、情報公開とは別の、「死刑存置の宣伝」という意図も浮かんでくるのだ。

 あらゆる犯罪事件をすべて報道するのというのは非現実的である。しかし、殺人などいわゆる凶悪事件に限って、最高裁で出された判決や決定をすべて報道するのは現実的に十分可能なはずだ。
 しかもそれはたんに現実的というばかりでなく、裁判員制度にむけての司法意識を高めるという意味では、報道されなければならないもののはずだ。
 ところが、最高裁に上告していた裁判の最高裁決定が、一部だが、報道されなかった殺人事件が存在する。それが「恵庭冤罪事件」(「恵庭OL殺人事件」)だ。

 今国会で審議入りした「共謀罪」法案。ネットでは、これに反対の立場を述べるブログやサイトが少なくなく、さらに日本弁護士連合会(日弁連)も反対を表明しているため、私があえて反対の立場を表明したり、批判記事を書いたりする必要もないかと思えたが、それにしても、マスコミの沈黙ぶりはどうだろうか。

 オウム麻原裁判(一審)の主任弁護人を務めた安田好弘弁護士は、その任務中に(98年12月)強制執行妨害容疑で逮捕・起訴され、のちに一審(東京地裁)で無罪が言い渡された。このでっちあげ逮捕・起訴の経過は本サイト・ブログでも取り上げてきた
 逮捕当時、マスコミは死刑廃止運動のリーダーである安田さんをここぞとばかりに叩いた。「法と正義を守る弁護士として、越えてはならない一線を越えてしまった」(朝日新聞、98年12月7日)、「一部に悪徳弁護士がいることは国民も知っている。不動産会社に資産隠ししの手口を発案・支持していたオウム担当の弁護士が逮捕されるという事件があったばかりだ」(毎日新聞社説、99年1月6日)。
 安田さんの事件の裁判がすすみ、警察・検察によるでっちあげが明らかになってくると、安田さんを「犯人」にできないマスコミは裁判の傍聴に来るのをやめた。
 03年12月、安田さんに無罪が言い渡されたが、マスコミは過去の犯人視報道に沈黙した。朝日新聞は「警察・検察内部には、安田弁護士が、公判で徹底的に争う「人権派」弁護士であることを敵視する感情が根深くあることは事実だ」とひとごとのように解説したが、この「警察・検察」という言葉を「マスコミ」と置き換えてもよいほど、マスコミによる刑事弁護攻撃の姿勢は一貫している。
 それを象徴するような出来事と報道が最近、これまた安田さんに絡んで起きた。
 今度の安田さんは弁護人である。99年に山口県光市で起きた母子殺害事件で、当時18歳の男性が殺人罪などに問われている裁判の上告審の口頭弁論が14日に最高裁で開かれる予定だったが、安田さんともう一人の弁護人が欠席して開かれなかった。
 安田さんたちの欠席理由を含む詳しい経緯は宮崎学氏のブログに掲載されているが、日弁連が開催する裁判員制度の模擬裁判リハーサルへの出席、今月に前弁護人から引継ぎをしたばかり、いずれも非難されるような理由ではない。
 ところが、検察は「欠席は裁判を遅らせるのが明らか」、弁護士出身の濱田邦夫裁判長も「正当な理由に基づかない不出頭で、極めて遺憾」と批判し、検察受け売りのマスコミは、このときとばかりに、欠席で屈辱を受けたという被害者遺族のコメントを局部拡大している。
 検察・マスコミによる“裁判を遅らせている”という非難は、安田さんが主任弁護人を務めた麻原裁判でも繰り返された構図であり、刑事弁護攻撃の定番といってよい。
 一方で、安田さん逮捕は警察・検察による麻原裁判弁護潰しのためという見方が支配的だが、警察・検察が裁判を妨害しているという理由ではマスコミは絶対に批判しないのだ。
 別のブログはテレビの報道を検証しているが、その報道手法を冷静に分析しているので引用する。

 ・・・まず最初に被害者の家族の「これほどの屈辱を受けたのは初めてだ」というコメントを流します。次に裁判に弁護士が欠席したということを流して、裁判所の「正当な理由に基づかない不出頭で、極めて遺憾」というコメントをそのまま流し、その後光市事件が如何に残虐な事件だったかという映像を流した後、そして最高裁で弁論が行われた場合は判決が覆るかも知れないという情報を伝えた後、斉藤とかいう弁護士のコメントで「弁護側は裁判を引き延ばして死刑を遅らせようとしているのではないか?」と言わせ、最後にスタジオの大塚とかいうキャスターが「裁判があることは分かっていたのだから、裁判に欠席するなんて言語道断だ」と言わせ、それで終わりです。弁護側の主張は一切取り上げられず、弁護側はまるで何も言わずに突然裁判を欠席したかの様な報道だったのです。
要するにメディアの報道っつーのはまず死刑ありきなんでしょう。あんな残虐な事件をした人間に弁護など必要ないと思うから、弁護士も当然悪者となって、彼らの主張を聞く必要など無いという結論になるわけです。そしてその様な短絡的な結論によって、「裁判にはある程度の準備が必要だ」という、普通の裁判ならごく当たり前に通用する論理が通用しなくなるのです

 問題なのは、このような雰囲気のなかで、裁判員制度が実施されるということだ(非難されている安田さんの裁判欠席事由が裁判員制度の模擬裁判への出席なのが象徴的だ)。いまのマスコミの犯人視・悪人視報道と、それとセットになった刑事弁護攻撃は、裁判員制度の実施をにらんだ、「模擬・魔女裁判」なのかもしれない。そういうマスコミに選択され、コントロールされた被害者像に共感しているようでは、メディアを見る目がない。
 安田さんは「和歌山毒カレー事件」上告審の弁護人も引き受けている。和歌山事件でも刑事弁護が攻撃された。「弁護活動も否認や黙秘をするように“入れ知恵”をして、ポイントを上げることを身上とするようになった」(「産経抄」98年10月30日)。安田さんの逮捕は、和歌山事件の疑惑報道に次いで起こった。
 99年10月、保釈された安田さんは、マスコミへの怒りを支援者に隠さなかった。安田さんがいま山口と和歌山の2つの事件の弁護人をなぜ引き受けているのかは分からないが、安田さんは刑事弁護を攻撃するマスコミの前ににあえて立ちはだかっているのでないかと思えてならない。

 5日の各種報道によると、三重県名張市で1961年、女性5人が農薬入りのぶどう酒を飲まされて毒殺され、12人が中毒になった「名張毒ぶどう酒事件」で、名古屋高裁(小出※一裁判長)は、無実を訴えている死刑囚の奥西勝さんが裁判のやり直しを求めていた第7次再審請求を認める決定をした。(※は「金」へんに「享」)

名張毒ぶどう酒事件、再審決定・・・名古屋高裁(ヨミウリ・オンライン、5日)

 これは、「横浜事件」(1942年以降、雑誌編集者や新聞記者らが治安維持法違反容疑で次々と逮捕されていった言論弾圧事件)で、終戦直後に有罪判決を受けた5人の遺族による第3次再審請求即時抗告審について、東京高裁が3月10日、再審開始を認めた横浜地裁決定を支持したのに続く、重要なニュースだ。

 インターネット新聞「日刊ベリタ」は25日の記事で、英国のゴールドスミス法務長官が、当初、英国のイラクへの武力行使を違法としていたのに、開戦直前になって合法とする判断を示した背景を追及している。

なぜ英国は対イラク開戦を合法化したのか 法務長官の心変わりの背景を探る (有料)

 この記事は、イラクへの武力行使の法的根拠と、英国の司法制度の両方に関心のある本ブログ管理人にとっては、非常に面白かった。

 「袴田巌さんの再審を求める会」発足の集いが19日、東京・港区で開かれた。

 同会はこれまで、「袴田事件の報道を収集し配布する会」という名前で活動してきたが、死刑囚にさせられている袴田巌さんの再審請求に対し、東京高裁(安広文夫裁判長)が04年8月27日、即時抗告を棄却する決定をして以降、最高裁で袴田さんの再審を勝ち取ることを目的として、会名を変更して再出発することになった。

 集会では、袴田事件弁護団の西嶋勝彦さん、秋山賢三さん、村崎修さんからの報告・説明を受けて、参加者が討論し、最後に袴田巌さんの姉・袴田秀子さんが、巌さんの人間性を率直に表明した。

 筆者は個人的都合で集会の開始に間に合わず、会場に到着したときには、村崎弁護士の話まで進んでしまっていたが、それでも自分自身にとっては有意義な集会だった。

 東京・立川市の防衛庁官舎の新聞受けに自衛隊イラク派兵反対を訴えたビラを投函し、「住居侵入罪」に問われた市民団体のメンバー3人に対し、東京地裁八王子支部の長谷川憲一裁判長は、16日、全員に無罪を言い渡した。

 無罪判決を勝ち取ったのは「立川自衛隊監視テント村」のメンバー3人。3人は2月27日に警視庁公安部に「住居侵入容疑」で逮捕され、その後、75日間勾留された。(日刊ベリタ、この記事は無料

【「辺境通信」の過去の関連記事】

・アムネスティ、反戦ビラまき逮捕の市民運動家を日本初の「良心の囚人」と認める(4月17日
・反戦ビラ入れ逮捕・起訴で抗議集会(4月26日
・反戦ビラ事件:保釈決定に検察が抗告(5月9日
・反戦ビラ事件:3人が保釈される(5月12日
・反戦ビラ事件:弾圧被害者が報告 「人権と報道・連絡会」で(5月20日

【関連サイト】

立川・反戦ビラ弾圧救援会

 産経新聞によると、住宅金融債権管理機構(現整理回収機構)の不適切な債権回収をめぐり、廃業を表明した元同機構社長で元日弁連会長の中坊公平弁護士(75)について、大阪弁護士会は4日、懲戒請求を却下する決定をした。
『大阪弁護士会は、中坊弁護士が、旧住宅金融専門会社から債権を引き継いだ同機構社長として不適切な債権回収を放置、継続させたとして、社長を退任した1999年8月までの間に弁護士法が懲戒理由とする「非行」があったと認定した。
 しかし社長退任時を起算点とすると、昨年3月の懲戒請求時には3年が経過しており、同法が定めた請求要件を欠いていると判断した』
Sankei Webの該当記事

 この件について、ブログ「闘うリベラルのチャンネル」は、次のように書いた。

『さて、今回の判断は、政治的な配慮に基づいたものとの解釈が可能だ。つまり、中坊氏の非行事実は認定しながら、申立期間を経過しているとの形式的な理由を以て却下の判断を下しているからだ。日弁連会長まで務めた人物を懲戒するのは躊躇するが、さりとて、事実関係に目をつぶれば知っている人々の総批判を招きかねず弁護士会の権威が揺らぐ。そこで、事実関係は認めつつ、懲戒請求自体は却下するという政治臭ぷんぷんの判断を下したのではないか』(該当記事

 私も同感である。

 なお、「朝日」の記事には次のようにあった。

『この問題で中坊氏は詐欺容疑で告発され、東京地検特捜部が事情聴取。昨年10月、中坊氏は責任をとる形で大阪弁護士会に退会届と弁護士の登録取り消し届を出して廃業する意向を示したが、処分が確定しておらず、受理されていない』

 マスコミが中坊氏を持ち上げていた頃を思い出す。「毎日」では中坊氏は「開かれた新聞」委員会の委員を務めていた。「朝日」は「金ではなく鉄として」というタイトルの中坊氏のコラムを連載していた。今回、大阪弁護士会は懲戒請求却下という"不処分"についてあえて公表に踏み切ったが、中坊批判は、なおもマスコミによって抑制されているように思える。

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