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 12月に入り、日本の死刑をめぐる動きが緊迫化してきた。

 先月(11月15日)には、国連総会第3委員会が、全世界的な死刑の執行停止を求める決議を採択した。
国連総会委、死刑執行停止を決議 日米中などは反対(中日新聞、11月16日)
国連総会の委員会、死刑執行停止決議を採択(AFP、11月16日)
国連 : 死刑の執行停止に関する画期的な決議を採択(アムネスティ、11月19日)

 決議案は、賛成99か国、反対52か国、棄権33か国で採択された。日本は米国、中国などとともに反対したが、いまや法律上あるいは事実上死刑を廃止しているのは133か国にのぼり、06年に死刑を執行した国は25か国しかない。AFP報道などによれば、早ければ12月にも加盟全192国が出席する国連総会本会議に採択にかけられるとみられ、採択されれば国連決議となる。今回の委員会決議の採択は法的拘束力はないものの、「死刑制度廃止の必要性を世界各国が認識する転換点となる」(リペール・仏国連大使)、「倫理的・政治的に大きな重要性がある」(アムネスティ)という見方を否定できない。

 ところがこの国連の動きに水を差すかのように、日本では12月7日、3人の死刑囚の死刑が執行された。

 今回の執行について、マスコミは執行された死刑囚の氏名などが公表されたことをことさらに取り上げ、拍手を送っている。たしかにこれまで公表されなかったことは、死刑の賛否を問わず「秘密主義」と批判されてきた。しかし、今回の執行に関する法務省や鳩山邦夫法相の見解を読むと、情報公開とは別の、「死刑存置の宣伝」という意図も浮かんでくるのだ。

 5日の各種報道によると、三重県名張市で1961年、女性5人が農薬入りのぶどう酒を飲まされて毒殺され、12人が中毒になった「名張毒ぶどう酒事件」で、名古屋高裁(小出※一裁判長)は、無実を訴えている死刑囚の奥西勝さんが裁判のやり直しを求めていた第7次再審請求を認める決定をした。(※は「金」へんに「享」)

名張毒ぶどう酒事件、再審決定・・・名古屋高裁(ヨミウリ・オンライン、5日)

 これは、「横浜事件」(1942年以降、雑誌編集者や新聞記者らが治安維持法違反容疑で次々と逮捕されていった言論弾圧事件)で、終戦直後に有罪判決を受けた5人の遺族による第3次再審請求即時抗告審について、東京高裁が3月10日、再審開始を認めた横浜地裁決定を支持したのに続く、重要なニュースだ。

 「袴田巌さんの再審を求める会」発足の集いが19日、東京・港区で開かれた。

 同会はこれまで、「袴田事件の報道を収集し配布する会」という名前で活動してきたが、死刑囚にさせられている袴田巌さんの再審請求に対し、東京高裁(安広文夫裁判長)が04年8月27日、即時抗告を棄却する決定をして以降、最高裁で袴田さんの再審を勝ち取ることを目的として、会名を変更して再出発することになった。

 集会では、袴田事件弁護団の西嶋勝彦さん、秋山賢三さん、村崎修さんからの報告・説明を受けて、参加者が討論し、最後に袴田巌さんの姉・袴田秀子さんが、巌さんの人間性を率直に表明した。

 筆者は個人的都合で集会の開始に間に合わず、会場に到着したときには、村崎弁護士の話まで進んでしまっていたが、それでも自分自身にとっては有意義な集会だった。

 1966年6月、静岡県清水市(現静岡市)の味噌製造会社役員宅で一家4人が殺害された事件で、死刑囚にさせられている袴田巌さんの再審を開始するかどうかの決定が、今週末までに東京高裁で出される予定だ。
・毎日-速報詳報
・朝日-静岡
読売
静岡新聞

 袴田さんの支援側は、決定後に東京と静岡で集会を開催する。「袴田巌さんの再審を開き、無罪を勝ち取る全国ネットワーク」のウェブ(http://www.hakamada.net/)に、集会の日時と場所が掲載されている

 11日の朝日新聞(アサヒ・コム)によると、東京都立川市の自衛隊官舎に反戦ビラを配ったとして、住居侵入罪に問われ、東京地裁八王子支部で公判中の市民団体「立川自衛隊監視テント村」(同市)の男女3人が11日、保釈保証金を納めて保釈された。
 東京高裁が同日、保釈を許可した同支部の決定を支持し、検察側の抗告を棄却したためだという。
該当記事

 9日のインターネット新聞「日刊ベリタ」によると、自衛隊のイラク派兵に反対するビラを東京・立川市の防衛庁官舎の郵便受けに入れたことで、住居侵入に問われた市民3人に対し、東京地裁八王子支部は7日開かれた初公判後、保釈を認める決定をした。これに対し、検察側は東京高裁に即時抗告した。(該当記事
【「辺境通信」関連記事】
アムネスティ、反戦ビラまき逮捕の市民運動家を日本初の「良心の囚人」と認める
反戦ビラ入れ逮捕・起訴で抗議集会

 東京新聞5月5日付朝刊の「特報」は、「日の丸・君が代強制」問題、具体的には、東京都教育委員会による、卒業式で君が代斉唱の時に起立しなかった教職員の大量処分の問題を取り上げていた。
 記事はまた、4月半ば、入学式で起立しなかった都立高の数学担当の男性教員が、都庁舎で都教委から聴取を受ける前の、都教育庁職員との押し問答について記述している。

『「聴取が公正であるよう、弁護士の立ち会いを求める」と教員。
「教育委員会の裁量で、立ち会いは認めていない」とはねつける職員。その場にいた学校長は、うつむいたままだ。教員に同行した弁護士が「懲戒処分を受ける可能性があるのだから、処分や手続きの公正さを確認する必要がある」と割って入る。押し問答は一時間続き、聴取に入ることなく終わった』

 教員には『教育や人権問題とは無縁』だった二人の弁護士が同行していたという。
 一人は『投資信託をはじめ金融商品の法務の専門家』で、きっかけは『自分も都立高校を卒業した。そこで今、普通に考えておかしいことが起こっているから』だという。
 もう一人は『日本企業と海外企業の間の契約書づくりを中心とする渉外企業法務に携わり、普段は都心のビジネス街で多忙な時間を過ごす』。
 彼は学校現場での「国旗・国歌の強制」のニュースを人づてに聞いて驚き、次のようにいう。

『内心の自由は歴史的にもっとも尊重されるべきであると考えられてきた人権のはず。それが、特定の人に対する狙い撃ちではなく一般的に侵されつつあるのではないか』
『今回の問題の本質は組合つぶしのように特定の思想を持った人々を権力が弾圧するという構図ではない。日の丸・君が代という多様な意見、感情を持つ問題について、権力でもってごく普通の人に特定の態度、行動をとることを強制している点にある』

 なるほど、「特定の人に対する狙い撃ち」や「特定の思想を持った人々を権力が弾圧するという構図」はいいわけか。
 こういう主張を平気でする弁護士をはじめとする一連の群れが、今の日本の暗澹たる状況を作りあげてきたのではないかと私は思う。
 誰かを「普通の人」と規定することと、(前者の弁護士のように)物事を「普通に考え」ることとは、まるで違うことだ。私にとって「普通に考える」とは、論理的に妥当な議論をすることを意味する。公権力が一方で『〔「国旗国歌法」の〕法制化により思想、良心の自由との関係で問題が生じることにはならない』(小渕恵三首相=当時、1999年7月28日参院本会議) といいながら、もう一方で君が代斉唱の時に起立しなかった教職員を処分することが、論理的におかしいということだ。ここに「道徳」の問題があるとすれば、「愛国心」などというレベルのものではなく、例えば「1は1ではない」という主張を認めるか否かのレベルの問題なのだ。
 「普通の人」という規定は自動的に、そうでない人をも規定する。それは、しばしば恣意的になされる。ある勢力にとって、左翼、外国人、「新宗教」の信者、ハンセン病を患った経験のある者などは「普通の人」ではない。
 後者の弁護士が、ニーメラーの次の言葉を引用したのは皮肉である。

『ナチスが共産主義者を攻撃したとき、自分は少し不安だったが、とにかく自分は共産主義者でなかった。だから何も行動しなかった。次にナチスは社会主義者を攻撃した。自分はさらに不安を感じたが、社会主義者ではなかったから何も行動に出なかった。
 ナチスは学校、新聞、ユダヤ人等をどんどん攻撃し、そのたびに不安は増したが、それでもなお行動に出ることはなかった。それからナチスは教会を攻撃した。自分は牧師だった。だからたって行動に出たが、そのときはすでに遅かった』

 牧師は「特定の思想を持った人」ではないのか。牧師はドイツではありふれた存在かもしれないが、世界全体ではそうではない。何が「特定」かは、集団や領域の違いや大小によっていくらでも変わる。言い換えれば、誰でも「特定」の存在になりうるのだ。だから国際人権法は「すべての者」に良心の自由を認めているのだ。「すべての者」には当然、「ごく普通の人」も「特定の人」も含まれる。
 ニーメラーの教訓は、全体主義者が「特定の人」を攻撃してきたら、傍観者になってはいけないということだ。傍観者を続けたら、いつかは自分が攻撃の対象になる。その教訓を口走った弁護士が、教訓を全然理解していない。おまけにこれを報道した記者も分かっていないかもしれない・・・日本はすでに手遅れか。

 ニーメラーは、ナチスが自分以外の「特定の人」を攻撃したのをみて、ナチスに対して不安を覚えたぶん、まだましだった。ニーメラーの「日本版」は、残念ながら以下のようになりそうだ。

〈XXXが共産主義者を攻撃したとき、自分は共産主義に少し不安だったので、何も行動しなかった。次にXXXは「オウム」を攻撃した。自分は「オウム」にさらに不安を感じたから、何も行動したくなかった。
 XXXは教師、ジャーナリスト、弁護士、ボランティア活動家、外国人等をどんどん攻撃し、そのたびに不安が増したので、ますます行動に出ることはなかった。それからXXXは自分を攻撃した。自分は自分だった。だからたって行動に出たが、そのときはすでに遅かった〉

 最近、オウム麻原氏の三女が大学に合格しながら入学を取り消された問題で、三女側が3月末に東京地裁に学生としての地位保全を求める仮処分を申請、東京地裁は4月28日に仮処分を決定し、結局5月6日に大学が入学を受け入れたと報道された。(朝日新聞、5月6日
 「XXX」には学校、新聞(またはテレビや雑誌)、さらに「ごく普通」と自己規定しそうな人々さえ当てはまることがある。

 25日のインターネット新聞「日刊ベリタ」によれば、自衛隊のイラク派兵に反対するビラを東京・立川市の防衛庁官舎の郵便受けに入れたことで、市民グループ3人が住居侵入に問われ逮捕・起訴された事件で、これに抗議する全国集会(主催・立川・反戦ビラ弾圧救援会)が25日、東京・国立市の一橋大学で開かれた。全国の市民運動家ら360人が参加、表現の自由への危機感を表明する声が相次いだ。
 3人は逮捕されて2ヶ月たつ現在も、警視庁の施設に拘置されており、接見禁止が続いている。
記事(全文閲覧は有料)

【論評】 ついに日本もここまできたか。数年前は、こういう逮捕は「オウム」だからということでやられていたのだが・・・「オウム」のときには、逆に弾圧する側(「オウム」を排斥したい住民)が集会を開いていたよな・・・

 イラク人質問題で大騒ぎになっている間に(それが政府・与党の狙いなのだろうが)、裁判員制度法案(正式には「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案」)が、たいした国民的議論もないまま、23日午後、衆議院を通過してしまった。このままでは、マスコミのいうように、今国会(第159回国会・常会)で可決成立してしまうだろう。
共同通信の報道

しかし皆さん、これで本当にいいんですか?

気になる人は、次のページが参考になります。
JanJanの記事

 おっと、重要なニュースを忘れてはいけない。

 22日の読売新聞(読売オンライン)によると、自民、公明、民主の3党は21日、裁判員法案に関し、裁判員の守秘義務違反に科す懲役の上限を1年から6か月に引き下げるなど、罰則を軽減する修正案を共同提出することで合意した。
 読売新聞は、「23日の衆院法務委員会と本会議で採決、可決される見通しだ」としている。(該当記事

【論評】 私は、仙台北陵クリニック事件(マスコミは「筋弛緩剤事件」と呼称)の一審判決以来、裁判員制度に反対している(詳しくはこちら)。
 一方で、次のようにも考えている。普段お茶の間で犯人視報道を見たり読んだりして「こいつは死刑だよねー」と口走っているような一般市民が、裁判員に選ばれ、自分自身が被告人に死刑を宣告するという事態に直面して、何か考えはしないだろうか。

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