三浦和義さんを米警察が拘束していることに関し、日本のマスコミ報道について、とりあえずいくつか言及しておきたいと思います。
あれほど犯人視報道が批判され、司法的にも負け続けてきた日本マスコミが、今回もまた無罪方向の情報を徹底的に抑圧しています。
刑事司法と人権の大原則の一つに「二重の危険の禁止」があります。「同一の犯罪について二度裁判を受けない」ということです。日本国憲法でも、「一事不再理」という言葉で第39条に明文化されていますし、米国で無罪判決に上訴できないのは二重の危険の禁止に従っているからです。(日本では、三審までが「一事」と見なされているが)
司法の知識がわずかにでもある人なら誰でも簡単に指摘できることで、検索した限り、いくつかの他のブログでも指摘されていますが、マスコミは無視を決め込むか難癖をつけるかして「二重の危険ではないか」という批判を全力で潰すつもりでしょうか。
以下の報道が挙げるように、法理論的には、米警察は国外の容疑は捜査しないが、日本警察は国外の容疑も捜査するので、日本人は米国での容疑は日米両方で立件されるおそれがあります。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080223-00000105-mai-soci
しかし、現実に法が成り立っているというだけで、それが正しいことにはなりません。この状態は、すべての日本人に不利であり、日本の裁判所の出した無罪判決を不当に軽視することになりえます。犯人視メディアは司法分野でも日本を米国の「属国」にしたいのでしょうか。
また、憶測や未確定な事実に基づく無責任な主張も目立ちます。情報源の当局者の氏名・身分をあいまいにして「新証拠」があると騒いでいます。読売は「FBIが」と書いていますが、
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080224-OYT1T00775.htm?from=navr
これも直接取材したのかどうかかなり怪しい。
一方、AP、LAタイムズなど米メディアは、情報源明示の原則に従っていると思います。明示できない場合でも、その旨を書く。例えば以下の報道では
http://ap.google.com/article/ALeqM5jqiYnCdcQGC9fhOWfKISGc2lpwswD8V1CL782
「『私は、米捜査員がすでに証拠をもって立件できていると信じています』銃撃事件当時の警視庁捜査員、坂口勉氏が日曜日のテレビ朝日のインタビューで述べました。『もし彼らが新証拠を持っているなら、それは重大な段階にあるでしょう』」
("I think U.S. investigators have all along believed that they can make the case with the evidence they had already collected," Tsutomu Sakaguchi, a Tokyo Metropolitan Police investigator at the time of the shooting, told TV Asahi in an interview Sunday. "If they have a new evidence, that could be a decisive step.")
いまの段階で当局者についてまともなに報道できるのはせいぜい以上のような「新証拠が存在すると信じていると元捜査員が言った」レベルの内容だと思います。
また、日本に比べ米での報道が地味だと日本マスコミは報道していますが
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/080224/crm0802241756014-n1.htm
法廷まで行っていない今の段階では当然です。むしろ、逮捕段階で出所不明の警察情報が大量に報道される日本が異常です。
米の警察も日本マスコミの特性を知っているでしょうから、今の段階で彼らに情報を直接出すとは思えません。今後の懸念としては、米捜査当局が日本警察に情報提供し、それを取材した日本の報道機関がリークして、米メディアがそれを報道し、陪審員に予断を与えるおそれです。まあ米メディアも日本の犯人視報道をまともに相手にしないと思いますが、過去米国内にはアトランタオリンピック爆撃事件の犯人視報道もありましたので、どうなるか分かりません。
日本でも今後裁判員制度が実施され、日本新聞協会などマスコミ団体はそろって「指針」を掲げましたが、あれはやはり「見せかけ」でしたか。
最後に、今回の容疑について、「カリフォルニア州の共謀罪では、2人以上が犯行を共謀したことさえ立証できれば、実行犯の特定も不要になる」ことを得意げに伝えている報道もありますので言及しておきますが、
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc&k=2008022400074
共謀があったというためには、実行犯を特定しようがしまいが最低限、「謀議」があったことは証明しなければなりません。ところが、98年7月1日の東京高裁判決(最高裁が検察側上告を棄却したのでこれが確定、最高裁のHPで検索可)では、判決文のかなりを割いて謀議について検討した上で、「その共犯者がアメリカにいたとすると、その者との間で謀議をする余裕はほとんどなかったようにみえ、もとより、現実に謀議をしたことを窺わせる痕跡は全く認められない」などと謀議を否定しています。
マスコミは、その判決文に書かれている以下の自分たちに対する批判をもう一度読み直すべきでしょう。
「報道する側において、報道の根拠としている証拠が、反対尋問の批判に耐えて高い証明力を保持し続けることができるだけの確かさを持っているかどうかの検討が十分でないまま、総じて嫌疑をかける側に回る傾向を避け難い」

合衆国憲法を詳しく読めば二重の危険は同州のみに限定されないと他の条文と整合性が無くなることが分かるはず。
批判自体は結構ですが、
(1)もっと具体的にきちんと説明してください。
(参考)
・アメリカ合衆国憲法
http://tokyo.usembassy.gov/j/amc/tamcj-071.html
二重の危険の禁止は修正第5条で規定。「何人も同一の犯罪について、再度生命身体の危険に臨まされることはない」。
・カリフォルニア州法
http://d.hatena.ne.jp/attorney-at-law/20080228/1204156442
他州での訴追・告発を自州であったものと見なす規定(旧法では他州だけでなく他国についても認められていた。今話題の規定)
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